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NASAの技術をハンダの基準に宇宙編

H-Ⅰロケットで宇宙への一歩を踏み出す

当社は創業間もない大正期に航空機用発電装置を開発して以来、わが国の航空電装品分野で独自の強みを発揮してきた。

その一方で、宇宙関連は1970年代まで進出の手掛かりがない状態だった。そんなあるとき、航空電装品で日ごろから付き合いのあるメーカーから、ロケット用の油圧ポンプを開発してもらえないかと声がかかった。

しかし当社としては簡単には飛びつけなかった。打ち上げ時の振動・衝撃、真空に近い状態での動作、きわめて高い信頼性への要求。それまで宇宙で作動するモータの経験などなかったため、当社の技術者は本当に可能なのかとまどい、逡巡した。

それでも、客先メーカーの技術者から「失敗して元々だ。一緒にやってみないか」と声をかけられて後押しされて、宇宙分野に踏み出したのである。

液体燃料ロケットによる商用衛星打ち上げを目指していた宇宙開発事業団(現JAXA)は昭和50年代、アメリカの技術を使って作ったN-Ⅰ、N-Ⅱロケットを打ち上げていたが、技術がブラックボックスでは改良もままならないと国産の液体燃料ロケット開発に舵を切った。ちょうどその頃の話である。

1986(昭和61)年、宇宙開発事業団は2段目ロケットを純国産化したH-Ⅰロケットの打ち上げに成功したが、同ロケットの油圧ポンプには当社が開発した電動モータが組み込まれていた。これが宇宙分野の第一歩であった。

手垢にまみれた付箋だらけの本が決め手に

これをきっかけに、当社は宇宙分野に積極的に乗り出した。

その当時、スペースシャトルでの各種実験用の電源装置の売り込みを行っていた。宇宙分野の実績がほとんどなかった当社に対して、スペースシャトルにおける日本の実験装置を担当するメーカーはつれない態度だった。

何度もお願いに行くうちに、先方の担当者が「NASAで採用している技術は、宇宙用のハンダひとつとっても、この本にあるように大変高度なものなのです」と一冊の本を見せた。

ハンダ付けという基本的な技術一つとっても、NASAで採用されるにはこれだけ気をつけるべき点がある。今からすぐにこれだけのものは身に着けられるものではないと諦めさせようという作戦だ。

しかしこれに対して、当社の担当者は付箋をつけてボロボロになるまで読み込んだ同じ本をかばんから取り出した。先方が見せたきれいな本とは対照的であった。「当社ではこの本をハンダの基準に採用しています」。

これには先方も納得せざるを得ず、信頼を得て受注にこぎつけた。1992(平成4)年9月には、スペースシャトル「エンデバー号」が毛利衛さんを乗せて打ち上げられ、当社が開発したスペースシャトルでの各種材料溶解実験のための電源装置が搭載された。

姿勢制御用アクチュエータを開発

1997(平成9)年、文部省宇宙科学研究所が新形固体燃料ロケットM-V(ミュー5)を打ち上げたが、3段目姿勢制御用エンジンのTVC(スラスト・ベクトル・コントロール)に、当社開発のサーボアクチュエータが使われた。同ロケットにより翌1998(平成10)年には火星探査機を打ち上げている。また、1999(平成11)年、宇宙開発事業団が打ち上げたH-ⅡAロケットの2段目ロケットエンジン用サーボアクチュエータを開発・納入している。

2001(平成13)年8月に宇宙開発事業団が打ち上げたH-ⅡAロケット1号機の固体ブースターと第二段ロケットの両方に、ロケットの噴射方向を動かすため、当社のサーボアクチュエータが採用された。

翌年打ち上げられたH-ⅡAの3号機ではサーボアクチュエータが採用された以外に、同ロケットで打ち上げられた次世代型宇宙実験システムに当社のデータレコーダが組みこまれている。

イプシロンロケットや国際宇宙ステーションに補給物資を運ぶ宇宙船(HTV)にも当社開発製品が搭載されており、当社は今後も宇宙開発の一翼を担い続ける。