輝いてこそ技術 SINFONIA まもなく創業100年

戦後、日本全国の路面電車で活躍電車編

蓄電池式電気機関車からスタート

当社は創業直後から蓄電池車の開発を手掛け、1932(昭和7)年には蓄電池式機関車第1号機を軍向けに納品している。

このあとも軍の工廠や鉄道車庫で使う蓄電池式電気機関車(バッテリーロコ)の実績を積んでいった当社だが、戦前、電車の主電動機には進出できなかった。

当時の鉄道省は鉄道用の電動機生産を請け負う企業をあらかじめ指定しており、指定メーカーの中でだけで電車用主電動機の技術的ノウハウが蓄積されていた。当社も試作電動機を鉄道省に見せるなどしていたが、参入の壁は厚かった。

第二次世界大戦がはじまると、陸海軍の管理工場となって軍需生産一色に染まり、電車進出どころではなくなってしまった。

電車主電動機への参入図る

1945(昭和20)年8月終戦となり、軍の管理下で軍需製品を作っていた当社の操業はすべて停止した。GHQ(連合軍最高司令部)による旧軍需工場の民需転換を促進する方針に呼応して、同年11月、当社は民需転換の許可を受け、生産復興のスタートを切った。

陸海軍の軍需を失った当社は、運輸省鉄道総局(鉄道省の後身)工作局車両第二課(動力車両の担当課)に日参して電車用の電動機に参入できるよう活動を続けていた。指定メーカーは戦災により生産能力を大幅に低下させていた。

当時の車両第二課長の島秀雄氏(後に国鉄の初代技師長として新幹線を開発、宇宙開発事業団初代理事長)は、指定メーカーは当面、省線の電動機生産に集中し、路面電車の電動機生産は、当社をはじめ非指定の電機メーカーが受け持つことに決定した。

壊滅状態になった他社工場から戦災によって壊れた電車電動機の修理を引き受けるところから始まった。これは東京の都電だけで数百台に及んだ。さらに、1945(昭和20)年末から指定メーカーと共同で路面電車用の主電動機「MT60型」を設計し、翌年から製品の出荷を始めた。

電車用主電動機は直流機の中でも最も難しいものの一つとされていただけに、完成には並々ならぬ努力を払わなければならなかった。これには戦前の電気ショベル用電機品の製作経験が役に立った。また、戦時中、軍需工場に指定された他社に対して当社が技術指導していたこともあって、指定メーカーは電車用主電動機の技術を助言してくれた。

この電動機は製作開始以来、1947(昭和22)年9月末までの約1年の間に東京都電向けの209台をはじめ、名古屋市電、札幌市電、京都市電、函館市電、秋田市電など全国主要都市交通局や私鉄などに合計350台を納入し、都市交通の復興に大いに貢献した。結局、2年間に1000台以上の電車用主電動機を出荷し、終戦直後の当社の経営を支えた。

また、運輸省鉄道総局から省線電車用主電動機として「MT40型」を受注し、その後、数年にわたって月産30台ほどのペースで生産した。さらに1962(昭和37)年、国鉄電車の電動機として中遠距離区間電車用の「MT54型」、近郊区間用の「MT55型」を開発、量産を始めた。

東京の山手線が鶯色になり大阪環状線がオレンジ色になったときの電車である「103系」に使用された主電動機が「MT55型」である。

独自方式の電車用主電動機を開発

1954(昭和29)年、当社は垂直軸カルダン駆動方式直流電動機を独自開発した。

カルダン駆動方式は電車の車輪の駆動軸と主電動機をつなぐ機構の一種で、線路に対する車輪の追随性が良い、車輪からの振動・衝撃を直接受けないため消耗が小さいなどの利点がある。

しかしカルダン駆動方式は欧米メーカーの設計が基本で標準軌(新幹線のレール幅)用になっているので、日本の鉄道で主流の狭軌では必要なスペースが大きすぎるという問題があり、日本で採用するときには困難が多かった。

そのため、わが国の狭軌の電車に対応してコンパクトな機構の垂直カルダンという当社独自の方式を開発したのである。

同年、第1号機が淡路島の淡路交通に納入され、その後、越後交通栃尾線や三重交通志摩線・湯の山線(いずれも現在は近畿日本鉄道)の電車や日鉄鉱業(釜石)の電気機関車に装備され、狭軌の電車やさらに狭いナローゲージ電車の速度向上と乗心地の改善にその特性を発揮した。

新幹線に滑走検出装置が採用される

1964(昭和39)年10月、オリンピックの直前に開通した東海道新幹線に当社の開発した滑走固着検出装置が採用され、量産が始まった。

この技術は、戦時中ドイツから潜水艦で運んできた技術資料の中に磁気増幅回路に関するものがあったのが発端である。当社の技術者がこの技術資料をもとに1950年頃に磁気増幅回路を試作。その後、同回路を利用した論理素子を開発し、さらにこの論理素子を使って電車の滑走防止装置を試作していた。

一方でトランジスタ方式の論理要素「ロジックス」を開発。こうした努力が、当社の開発した滑走固着検出装置が東海道新幹線に使われるという成果につながった。山陽新幹線、東北・上越新幹線にも当社の滑走固着検出装置が採用され、さらにこの技術は自動車用のABSにまで広がっている。